2012年4月11日水曜日

ふじかわ小児科 ふじかわきっず通信


不活化ポリオワクチンの開始

当院でも不活化ポリオワクチンを開始します。
(開始に至った経緯については、前回、前々回のキッズ通信を再読ください。)。昨年秋以降も、北京でのポリオ流行、神奈川県単独の不活化ワクチン導入、厚生労働大臣による不活化ワクチンの前倒し導入発言(「2013年春から2012年秋に前倒しで導入」と発表。但し、現在進行中の治験スケジュールでは年内開始は不可能と思われます)の報道がありましたが、御家族からの接種の御要望が多く、当院でも開始させていただくことにしました。


<接種の概要>
① 使用ワクチン:仏国サノフィ社製不活化ポリオワクチン「Imovax Polio」
         (世界で最も多く使用され、安全性・有効性が確認済み)

② 接種部位:上腕に皮下注射(カナダ方式)


③ 接種対象:生ポリオワクチン未接種で、現時点での不活化ポリオワクチン のディメリット(国の健康被害に対する補償がない、有料である、将来無料化(定期 接種化)される予定である等)をご家族が承知されている方で

 1) 当院で既にヒブ、肺炎球菌ワクチンを接種されている
 2) 当院でこれからヒブ、肺炎球菌などを接種される予定
 3) ご家族がワクチンの同時接種の意義・安全性を十分理解されている


以上の乳幼児を今回の予約分の対象とします。

④ 接種回数:三種混合ワクチンに準拠した方法で接種します(生ポリオワクチン未接種の場合)
     生後3カ月または任意の時期に1回目を接種。
     以後、4(-8)週間隔で2回(計3回)接種します。

重要  
   

・不活化ワクチンの接種スケジュールは国によって様々ですが、最低でも4回、出来れば5回接種することが推奨されています。当院では、定期接種化されるまでに3回接種し、以後は定期接種化(平成24年度末)後に4回目以降の接種をしていただきます。日本のスケジュールは決まっていませんが、幼児期から学童期にかけて4回目(及び5回目)接種のスケジュールが設定されると思います。

・尚、既に接種されている他院では、当院と異なるスケジュールを説明されているかもしれませんが、初期の感染防御には2回接種すること、終生の免疫獲得には4回以上の接種が必要であることが要点です。


<<追加>>

尚、生ポリオ2回接種済みでも、1年以内に中国、インド、パキスタン等の流行地への渡航予定の幼児にも2回接種します(最後の生ポリオワクチンから2ヶ月以上経過していれば、4-8週間隔で2回接種)

すでに1回生ワクチンを接種の方は、生ワクチン接種後2ヶ月以上経過していれば、4-8週間隔で2回接種します(幼児期以降に4回目も必要)

⑤ 予約方法
予約は当院への電話(06-4865-5020で受け付けますが、輸入本数に限りがありますので、予約満了後に一旦、予約を打ち切ることがあります。ご承知ください。


最後に
今回の不活化ポリオワクチンは、当クリニック(すでに開始されている他のクリニックも同様)とって、初めての国の障害補償が付かないワクチンです。
「現行の全てのワクチンの中でも最も安全なワクチン(WHOより)」ですが、ご家族とクリニックの間の強い信頼関係があって、接種できるワクチンと考えます。上記を熟読の上、希望される方のみご予約ください。

日本外来小児科学会に参加して 

今年も、8月最後の週末に、スタッフ全員とともに日本外来小児科(神戸)に参加してきました。全国から約2500人の小児科医、看護師、受付事務、保育士、薬剤師等が集まり、職務毎あるいは職務を越えて研修してきました。

例年のように、私が参加した主なセッションについて書きます。 
          
                
 1)不活化ポリオワクチンを始めよう(前回のキッズ通信を先に御一読下さい)
今回参加の最大の目的でした。クリニックで既に輸入ワクチンンを開始している先生、開始を検討している(私も)先生が40人集まり、不活化ポリオワクチン導入の必要性、マスコミ報道後の生ワクチン接種率の低下の実情、厚労省が進める生ワクチンから不活化ワクチンへの移行スケジュール、実際にクリニックで不活化ワクチンを開始に伴う問題点などが議論されました。これらについて、整理して記載します。


アメリカの貧困の原因は何ですか?

・不活化ポリオワクチンの導入の必要性
生ポリオワクチンの経口摂取が原因でポリオ(小児麻痺)を発症した乳児例の散発(報告例より恐らく多く存在する)、生ワクチンを接種した乳児の家族のポリオ発症(便から感染)、中南米でのワクチン株ポリオウイルス株の強毒化によるポリオ流行など、生ポリオワクチンの問題点が確認されました。
・生ワクチン接種率の低下
マスコミにより生ワクチンによる患者発生の報道が相次ぎ、通常90%を割ることがなかった接種率が80%台前半まで低下してきている報告がなされました。諸外国の例でも、接種率が50%を割るとポリオの大きな流行が生じる傾向があり、乳児の多くが生・不活化に関わらずワクチンを接種しないのは、不活化ワクチン定期接種化前の最大の問題と危惧されました。
・生ワクチンから不活化ワクチンへの移行スケジュール
厚労省は、単独ポリオ不活化ワクチン(海外で使用されているワクチン)の国内治験を今年7月に開始し、日本の乳児での有効性・安全性を確認して来年初めにも開始される予定でしたが、追加接種(1年後)までのデータを集積後に認可する方向に変更され、認可は早くても来年末に延びることが報告されました。また、同時に治験されている国内メーカーによる三種混合(DPT)+不活化ワクチン(四種混合ワクチン)の開始も再来年の春以降に延期されることになるようです。
・クリニックでの不活化ワクチン開始(定期接種認可前)の問題点
現時点で、不活化ワクチンを接種しようとすると、当院が並行輸入業者からワクチンを"個人輸入"というかたちで購入し、御家族に自己負担(4500-500円程度)を頂き接種することになります。最も議論になったのは、接種後に健康障害が生じた時、政府が認可していないワクチンのため公的補償が受けられず、輸入業者の補償のみが頼りになります。世界的に認められた極めて安全なワクチンですが、開始を検討している医師達にとっては、大きなネックになっています。

・今後の当院の不活化ポリオワクチンへの取り組み
今回のセッションに参加して、不活化ワクチンの定期接種化が予想より1年程度遅くなりそうなこと、生ポリオワクチンを含め乳幼児の非接種比率が上昇すると国内での流行が危惧されることなどを考慮し、当院でも準備が整い次第、早期に不活化ポリオワクチンの接種を開始することにしました。
しかし、現状では「インフルエンザワクチン」の予約と保護者の方々の「単独接種志向」で接種枠がないこと。さらにワクチンを保管する専用冷蔵庫の購入・設置の必要があり、開始は早くても年明けになりそうです。 また、当院で不活化ポリオワクチンの接種をご希望の方はたいへん多く、希望者が殺到するおそれがあり、ご希望の方全てに対応できるか不安があります。そのため接種対象者にいくつかの条件を設定する予定です。    
   
①ヒブや肺炎球菌等、他のワクチンとの「同時接種」を原則とします。
②当院でワクチンスケジュールを作成し、ヒブ・肺炎球菌・DPTを既に接種済みで生ポリオを見合わせているという方は単独接種もOK。
③御家族が十分に「不活化ポリオワクチン」のメリットとディメリットを承諾いただいたうえで、希望される方に接種をします。         
          
具体的な開始時期が決まり次第、ホームページやメール配信でお知らせします。ご予約の受付はまだ開始していません。

       

 2)ロタウイルスワクチンの開始
毎年2月から4月にかけて流行するロタウイルス性胃腸炎の生ワクチン(経口)が、11月から接種可能になります。高熱、嘔吐、下痢が数日続き、乳幼児にとって最も重症の胃腸炎(5歳までに、約90%が罹患)ですが、脱水だけでなく痙攣や脳炎を合併することもあり、入院治療を要することも珍しくありません。医療後進国では、乳幼児の死亡原因の一つになっており、早くから導入されたオーストラリア等では、罹病率が著明に減少しているようです。

①任意接種です。費用がおよそ1.2万円前後/回と想定されています。医療経済的には、罹患した場合に比べ、この価格でも安価のようですが・・・ (;´∀`)・・・ 先進国では定期接種化されているワクチンです。

②生後6週から24週の間に4週間隔で2回接種(経口投与)します。この時期は他のワクチンのスケジュールがたて込んでいる時期です。しかも生ワクチンですので、次のワクチンまで27日以上空ける必要があります。前後のワクチンの兼ね合いをよく考慮して予定を立てる必要があります。(看護師が個別にご相談を承ります。)   
           
           


あなたは、妊娠中の第七の月に何週間ですか?

 3)乳幼児喘息について
このテーマで、いくつもの講演、議論がありました。
秋から冬にかけて、乳幼児が風邪を契機に咳が多発し、横になるとゼイゼイ(喘鳴)して眠れない(御両親も眠れない)子どもたちが多数受診されます。日本では、喘息性(様)気管支炎と表現され、3歳までに3回罹患すると乳幼児喘息(広い意味で)と診断されます。
「喘息」という言葉が、かっての「公害喘息」や「成人や高齢者の慢性の難病」のイメージが強いため、ショックを受けられる御両親が多いですが、殆どの乳幼児は成長に伴って風邪をひいても喘鳴をおこさなくなります。欧米では、「喘息」と区別するため「急性細気管支炎」という言葉を使うようです。ただ、一部の乳幼児は、成長しても喘鳴を繰り返し、「真の喘息」に進展していく患者さんもおられ、アレルギーの有無や喘息の家族歴、喘息性気管支炎時の重症度(入院歴)等も考慮して、過剰な治療あるいは不十分な治療にならないことが重要であることを改めて痛感しました。     
            

 付記: お盆休みにも、小児科医のみの学会である日本小児科学会に3日間参加してきました。参加するたびに、その時代の大きなテーマがあるようですが、今は「ワクチン」、「軽度発達障害(自閉症、注意欠陥多動症候群等)」が注目されています。ただ、あらゆる領域が日進月歩で新しい考え方・治療が導入され、「目から鱗」の連続でした。休診で御迷惑をおかけしますが、少しでも日々の診療に反映できればと思います。
  


産休明けで復職したナースや新規採用のフレッシュな受付スタッフの歓迎会をしました
  


次回は開院5周年のランチの予定です・・・・ どこかいいお店を教えてもらえると嬉しいのですが・・・

ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン騒動、そして東北地方沖太平洋大地震

日本人が過去に経験したことが無い大地震・大津波が東北地方を襲い、半月が経過しました。当院にも被災地を逃れてこられたお子さんが受診され、ご家族の心痛を目の当たりにし、おかけする言葉もありませんでした。今はただ、阪神淡路大震災でも発揮された、日本人の地道で統制の取れた災害復興が成就することを祈るばかりです。

地震前には、宮崎の火山噴火、NZの大地震、京都大学入試での携帯電話を使用したカンニング事件等、2月以降に大事件が続きましたが、我々小児科医を驚かせたのは、3月初めに報道された小児肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを含むワクチン同時接種の後に、7例の死亡例が報告され、急遽両ワクチンの接種を中止するよう厚生労働省から通達されたことでした。


<ヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンについての考え>
 

両ワクチンは、日本で接種が開始されるまでの10年以上の間にすでに世界中で延べ数億回接種され、乳幼児の急性侵襲性細菌感染症(髄膜炎、敗血症等に)に著しい効果を有し、十分に安全が確認されて、日本でも接種が開始されました。
ただ、前述の感染症のピークが生後6ヶ月から1歳であるため、標準的接種開始時期が生後2ヶ月から1歳となっています。この時期は、乳児期早期の突然死(いわゆる、原因不明の乳児突然死症候群)を発症しやすい(年間約150人)といわれる時期と重なっています。さらにそれ以外にも、百日咳やRSウイルス感染によって引き起こされる呼吸停止、心疾患等の重症基礎疾患のある乳児の突然死が(その数倍)起こる時期と一致するため、偶発的にワクチン接種直後に乳児突然死症候群の症例が紛れ込む恐れがあることは、接種開始前から危惧されていました。

厚労省は、7件の死亡例の後一旦接種を中止し、専門家による調査・検討を繰り返しました。その後3月24日に厚生労働省(調査検討会)から、死亡例の調査結果及び諸外国での状況が通達されました。
 

1) 死亡例とワクチン接種の因果関係は認められなかった。

2) 諸外国での死亡報告頻度は、小児用肺炎球菌ワクチンで10万接種で0.1-1、
                        ヒブワクチンでは10万接種で0.02-0.01程度 
                  (両者とも死因は大半が乳児突然死症候群や感染症が占めている)
   この数値は、日本での現在までの接種者数から概算した数値と大差がない。
 

以上より、4月1日からの接種再開が指示されました。


なぜカメは火傷を吸わない


また、日本では、これらのワクチンの接種が開始されるまでは、単独接種が原則だったため、同検討会では同時接種についても検討されましたが、同時接種と単独接種の副反応発現率に有意差はない(海外、国内ともに)という結論が出され、特に安全性上の懸念なしとの意見でした。
世界の常識が日本の非常識とならないよう・・・ 繰り返します。 要するに「 同時接種をしたからといって、副反応のリスクが高くなるということはない。」ということです。
 

どんな予防接種でも薬でも・・・ 残念ながら100%安全と言い切れるものはありません。ただ、今回の検討ではワクチンを受けるリスクよりも、有益性が上回ると判断されて出された早期再開という結論と受けとめています。
  

でも、大切な大切なお子さんのことです。どんなに大丈夫と言われても、お母さんお父さんにとっては悩ましいことだと思います。 どうかデメリットばかりに捕らわれず、たくさん悩んで、たくさん考えてください。そして、納得してワクチンが受けられるようになって頂けることがベストです。そのために、私たち医療者のできることは、努力を惜しみません。何なりと聞いてください。子供さんのこと、心配なこといろいろあるかと思います。どんどん相談してください。お待ちしています。

 

<今後の対応>
 
前記の厚生労働省の通達により、4月から小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを再開予定です。(あくまで31日の最終通達待ちですが)
しかし、ヒブワクチンについては、同時期に異物混入のロットの存在が報告され(純粋な製造工場でのミス)該当するロットの回収作業が現在進められています。安全なロット供給が数週間から数ヶ月遅れる模様で接種再開はその後になるとのことですが、当院は幸運にも当該ロット以外のヒブワクチンをすでに保有しているために、一部公費負担接種開始とともに接種を再開できる予定です。
また、同時に一部公費接種開始予定だった、子宮頸癌ワクチンも希望者が予想をはるかに上回り、供給不足で新規接種予約受付は、早くても7月になりそうです。(中学1年生から高校1年生対象で3回接種)。
小児用肺炎球菌ワクチンは、厚生労働省の通達実施後に供給を再開するとのことで、4月は暫く供給不足になるようです。

他のすべてのワクチンを含め、当院では同時接種を従来どおり継続予定です。ただ、今回の死亡例に基礎疾患を有する乳児が複数おられたため、(特にご両親の強い希望がない場合には)基礎疾患を有する乳児(心臓疾患や染色体異常)は、両ワクチン(小児用肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチン)についてのみ暫くは単独接種を原則とする予定です。
  
 
<今回のまとめ、各市の対応>
 
4月から豊中、箕面でも開始予定であった小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、子宮頸癌ワクチンの一部公費負担がシステムとしては開始(池田、吹田は開始済み)しますが、小児用肺炎球菌ワクチンは短期間、子宮頸癌ワクチンは供給が増えるまで暫くお待ちください。再開時は、院内掲示やウエブで報告させていただきます。


尚、(老人のインフルエンザワクチン以外では、)初めての一部公費負担ワクチンですので、居住される市によって接種可能医療機関や料金が異なります。本日確認できた近隣の市の方針は以下のようです。(当院で接種する場合)


豊中市在住の方: ヒブワクチン1000円、小児用肺炎球菌ワクチン1000円、子宮頸癌ワクチン3000円(市内の医療機関のみ)
 

箕面市在住の方: 他市の医療機関で接種する場合(当院も)、市から依頼書をもらい接種。費用は一旦全額自己負担していただき、後日領収書を市に持参し公費負担分を還付してもらう。 
  
吹田市・池田市の方: 一部公費負担接種は、当該市の医療機関でのみ接種可能。 他市の医療機関(当院)で接種する場合は、全額自己負担で還付なし。


上記の公費システムは、平成24年3月末までの1年間の限定です。(それ以降の公費負担継続、無料(定期)化、逆に全額自己負担に戻る等は未定です)

 

<追記> その1 

 
4月から定期接種のワクチン(三種混合、麻疹・風疹、日本脳炎、二種混合)は、従来の豊中、箕面、吹田だけでなく、池田、摂津、能勢、豊能の方も依頼書がなくても当院で接種可能となりました。 ただし、BCGに限り吹田市のみ依頼書が不要で、その他の市の乳児は依頼書が必要となります。
はじめて受診する医師に予防接種を任せる不安は、小さくはないはずです。体調の悪い時にいつも診てもらっている「かかりつけ医」に予防接種も任せてもらえるようなシステムが早くできること、(定期予防接種を近隣の市の医療機関で手続きなく接種できることを私達は「相互乗り入れ」と呼んでいますが、)ヒブ・小児用肺炎球菌・子宮頸癌ワクチンが来年度には定期接種となり「相互乗り入れ」可能になることを切望しています。  
 

紆余曲折がありましたが、今回のワクチンの一部公費負担開始は、乳児及び女性にとって大きな福音で、一日も早くワクチンが安定供給され、接種対象者全員が早期に接種できることを望みます。



今回は長文になって申し訳ありません。厚生労働省の正式通達がこれからですので、今回のきっず通信は数日以内に内容変更する可能性がありますので、再度ご確認ください。 
 
<追記> その2
 
最後に、今回の震災に遭われたお子さんが定期接種を希望される場合、本来は住民票のある自治体が発行する依頼書が必要です。(電話で、郵送の依頼可能)しかし、現状で自治体の機能が働いていない場合は、依頼書がなくても公費で接種可能です。(豊中市に確認済み) 震災で、"それどころではない"というご心境でしょうが、予防接種は、必要な時期に必要な回数を接種することで、子ども達を守る大きな盾となります。ご検討ください。                                                           

2011年の年初にあたって

新年、あけましておめでとうございます。
約3ヶ月ぶりのキッズ通信になります。12月は、ノロウイルス性胃腸炎、RSウイルス性細気管支炎の流行とインフルエンザ予防接種の2回目が重なり、多忙な毎日でした。年末年始の連休で、九州に行ったり、久しぶりに読み残しの本(乳児健診、他科の医学書から新書、ミステリーまで)を読んだり、自転車で公園を走ったりして、少しエネルギーの補給ができました。
 今年予想されること、開始すること

1)インフルエンザ
インフルエンザは年末に数人の患者さんが来られたのみでした。新年は新学期の開始とともに、インフルエンザの流行で始まりそうですが、この冬はA香港 65%、Aソ連(新型インフルエンザ)25%、B型10%の割合で分離されていますので、久しぶりのA香港(乳幼児が重症化しやすい)主体の流行となりそうです。A香港は4年ぶりの流行で、乳幼児を中心に抗体保有率が低いと考えられ、急激な高熱とそれに伴う中枢神経症状(熱性痙攣、高熱せん妄、稀にインフルエンザ脳症)が特徴ですので、発症直後からの観察が特に重要と考えられます。また、今冬も新型インフルエンザ(Aソ連)が混在して流行するようですので、昨年、驚かされた急速な呼吸器症状の悪化(急性肺炎)にも注意が必要です。尚、新型インフルエンザは南� ��球を経由して2回目の流行に入りますが、ウイルスの構造は昨年と大きく変異しておらず、昨年、罹患されたお子さんは、罹患しないか軽症で済みそうです。

また、治療に関して、今年から日本製の2つの新しいインフルエンザ薬(点滴薬と吸入薬でいずれも1回投与で有効)が処方可能になりました。今までのタミフル・リレンザ以外の選択枝ができ、病状や年齢によって幅広い治療ができるかと思われます。
共同臨床研究に参加します。
 <研究目的>
①インフルエンザの感染期間(周囲にうつす期間)を確定する研究
②新しいインフルエンザ迅速検査(東洋紡製)が従来方法に比べ10倍の感度で検出できるとされているが、発症直後からの検出が可能かどうかの研究

<研究の方法>

① 回復期に改めて受診していただき、2回目の迅速検査を基にして感染期間を検討します。
② 急性期の鼻汁で2種類(新・旧)の迅速検査を施行、新しい迅速検査がより早期から感度高く検出できるのか検討します。

参考
①:大阪小児感染症研究会で昨年秋に第1報発表済み。同研究会から、より拡大した臨床研究を推奨され、北摂の複数の小児科開業医(豊能小児感染症研究グループ)が共同で研究を進めます。
②:大阪府立感染症研究所の指導のもと、(株)東洋紡との共同研究で行います。

★①②ともに、ご家族が上記内容に承諾と同意を頂いた方のみ、参加をお願いします。
2)花粉症について
関西ではおそらく2月中旬からスギ花粉が散布します。最近2―3年は平年の40%程度費飛散量で、落ち着いた花粉症でしたが、今年は、例年の5-10倍の花粉が飛散する30年ぶりの春を迎えるようです。よって、2月初めには、抗アレルギー剤の服薬・点鼻開始が必要で、季節の間はマスク、ゴーグル、目の洗浄など継続して行っておくべきと思われます。今年、心配しているのは、大量に飛散する日に喘息発作等の重症のアレルギー症状が出現しないかということです。花粉症の既往のある方は、早めに万全の準備で迎えてください。
3)新しい予防接種の公費負担開始
昨年11月の政府決定により、ヒブ、肺炎球菌、サーバリックス(子宮頸癌ワクチン)の公費負担(一部は自己負担)が決定、豊中市では今年の春以降に開始されるようですが、開始時期は未だ不明です。ご家族の自己負担が減り、接種率の上昇が期待できる素晴らしい政策ですが、一刻も早く接種すべき乳児や幼児達が、公費化を待っている間に、ヒブや肺炎球菌に罹患してしまうリスクが心配です(1月から導入決定済みの自治体で、公費化後の接種を予定されていた乳児で細菌性(ヒブ)髄膜炎に罹患した例がすでに複数報告されています)。


4)電子カルテの共有化(病診連携)


多くの患者様を紹介させていただいている箕面市立病院の電子カルテが当院の電子カルテとリンクされ、患者様の箕面市立病院の電子カルテ内のX線画像、検査結果、退院サマリー等が、承諾書を頂いた上で閲覧できるようになりました。箕面市立病院に慢性疾患で定期受診されている患者様、急性疾患などで入院された患者様の診療方針や検査結果など詳細な情報が確認でき、素晴らしい病診(病院と診療所)連携だと考えています。


おまけ 
  昨年のクリスマスの日にこんな姿で登場!?
 泣いちゃった子がいたかも? お宝画像です。このサンタさんに会えた子は超ラッキー!? かな?



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